ダイアリーNo.2 余白①

 就職活動していていいことは東京に行けることである。ずっと埼玉に住んでいて、埼玉の学校に通っている者からしたら、東京はあまりにも刺激的で、自由な活気にあふれている。もちろんあまりにも雑多で、危険な街でもあるけれど、映画や音楽、小説好きからしたら東京はまぶしすぎる場所だ。美術館やミニシアターの数は地方から見たら、まさしくパラダイスである。そして何よりもそこにはコミュニティがある。同じ趣味、同じ言語、同じ目的。地方ではなかなか見つからないマイノリティーのための居場所がそこにはあるのだ。

 一方で、地方には多様性が根付いていないように見える。もちろん僕が見つけていないのかもしれない。しかし、あまりにもマイノリティが生きていくためのスペースが地方にはないような気がする。

 

 一度、説明会で隣にいた男の人が僕と同じく映画マニアだった。彼は園子温(代表作「愛のむきだし」)と黒沢清(代表作「CURE」)、青山真治(代表作「ユリイカ」)が好きで、とても楽しそうに映画について語っていた。そして最も重要な共通点は宮台真司社会学者)の読者だということである。宮台真司についての説明は後に回すとして、僕たちはすぐ意気投合して、その場でラインを交換、それから何度かライン上で映画や小説、哲学についての意見を交換し合った。僕はそこそこ楽しんでいたと思う。今まで僕はじぶんのような人にあうのは初めてだったし、僕は誰かと話す機会がほしかったからだ。

 しかし、彼とラインをしていくうちに彼がどこか苦しんでいるように見えた。いったい彼は何に苦しんでいたのか。就職活動によって、彼は苦しんでいたのだろうか。あるいはもっとそれを超えた次元で苦しんでいたのだろうか。もちろん僕も苦しんでいる。僕も少し、いやけっこう病んでいる。様々な理由で。なんとか倒れないように立ち上がるけれど、時には立ち上がることができないこともある。しかし、最後は立ち上がる。が、彼の場合は少し違うのかもしれない。続きは次回へ

 

 

愛のむきだし

愛のむきだし

 

 

 

CURE

CURE

 

 

 

ユリイカ(EUREKA) [DVD]

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